SRPで残ったポケットをどうするか ― 再SRPを繰り返さず、再評価で外科を決める

歯周プローブから再SRPと歯周外科の二方向に分かれる判断を表したイラスト

SRPを終えて再評価をしたら、ポケットが残っていた。ここで「もう一度SRPをして様子を見る」を選ぶ先生は多いと思います。私は選びません。基本治療をきちんと行って、それでも残ったポケットは外科の適応と考えています。この記事では、その判断の根拠になっている文献と、私が再評価で見ているものを整理します。

目次

非外科でどこまで治るか:ポケットの約4分の3は閉じる

EFPの2020年ガイドラインの根拠になったシステマティックレビュー(Suvan 2020)では、縁下インスツルメンテーション後6〜8か月で、ポケットは平均1.7mm浅くなり、74%が閉鎖していました。手用器具と超音波の間にも、1/4顎ずつ行う方法とフルマウスで行う方法の間にも、有意差はありません。

つまり、器具や進め方を工夫しても結果は変わりません。基本治療はきちんとやれば約4分の3のポケットを閉じる力があり、逆に言えば、きちんとやっても約4分の1は残ります。

残るのはどこか、再SRPでどこまで閉じるか

ステージIII〜IVの患者で、基本治療後に残ったポケットへ再インスツルメンテーションを行った研究があります(Ferrarotti 2023)。閉鎖率は次のとおりでした。

残存ポケット再SRP 1回再SRP 2回
4〜5mm+BOP66.8%72.1%
6mm以上33.1%45.9%

閉じにくかったのは、複根歯、分岐部病変II〜III度、隣接面です。6mm以上のポケットは、再SRPを2回繰り返しても半分以上が残ります。

外科が非外科を上回るのは深いポケットだけ

外科と非外科を比べたシステマティックレビュー(Heitz-Mayfield 2002、12か月)の結果は、ポケットの深さではっきり分かれます。

  • 6mmを超えるポケット:外科のほうがポケットは0.58mm多く減り、アタッチメントも0.19mm多く得られる
  • 4〜6mm:ポケットの減少は外科が0.35mm上回るが、アタッチメントゲインは非外科のほうが0.37mm有利
  • 1〜3mm:外科は非外科より0.51mm余計にアタッチメントを失う

Lindheら(1982)の critical probing depth も同じことを示しています。それより浅い部位に処置をするとアタッチメントロスが起こる深さは、SRPで2.9mm、SRP+改良型ウィドマンフラップで4.2mmでした。浅い部位を開ければ失います。EFPガイドラインの根拠レビュー(Sanz-Sánchez 2020)も、アクセスフラップの優位は深いポケットで明確、という結論です。

これを受けてEFPガイドラインは、残存6mm以上にはアクセスフラップを、4〜5mmには再インスツルメンテーションを提案しています。骨縁下欠損が3mm以上ある深い残存ポケットには再生療法が推奨です。

外科で残せる歯は増えるのか

ミリ単位の差よりも知りたいのは、外科をしたほうが歯が多く残るのか、です。正直に書くと、フラップ手術と非外科を比べて「外科のほうが歯が残る」と直接示した試験は見当たりません。ステージIII〜IVの患者を後ろ向きに比べた最近の研究(Cao 2026)でも、ポケットの減少は外科が上回ったものの(1.16mm対0.77mm)、3年を超えると差は縮まり、失った歯の数に有意差はありませんでした。結果を左右していたのは、外科か再SRPかではなく、メインテナンスに定期的に通っているかどうかでした。

はっきりした差が出ているのは再生療法です。骨縁下欠損を再生療法とフラップ単独に割り付けて20年追った試験(Cortellini 2017、各群15名)では、歯の喪失は再生療法の2群で0本、フラップ単独で2本。再発は再生療法群の5回・6回に対してフラップ単独は15回で、再治療にかかった費用も再生療法のほうが少なく済んでいます。さらに、付着の喪失が根尖に及び抜歯相当と判断された歯でも、再生療法を行うと10年後に88%が残っていました(Cortellini 2020)。抜歯してインプラントや補綴に置き換えた群と比べて、合併症なく過ごせた期間に差はなく、10年間の総費用は再生療法のほうが低くなっています。

まとめると、歯を残すという点で直接の裏付けがあるのは再生療法です。アクセスフラップや切除療法については、「深い残存ポケットは歯の喪失リスクである」「外科は深いポケットを非外科より減らす」という2つの事実をつないだ推論にとどまります。

文献が言えないこと

「再SRPを何回やってから外科に移るべきか」を比べた試験はありません。外科と非外科の差は、深いポケットでも平均0.6mm前後です。しかもこれらの比較試験の多くは1980〜90年代のもので、低侵襲のフラップデザインや再生療法は含まれていません。また、試験に参加する患者はメインテナンスにきちんと通う人たちです。通院が途切れがちな日常臨床の患者で、深いポケットを残したままにすることの重みは、試験の数字より大きいかもしれません。平均値だけでは個々の部位の判断は決まらず、ここから先は術者が決めることになります。以下は私の決め方です。

私の決め方1:再評価はSRP後最低2週間、できれば1か月

再評価はSRPから最低2週間はあけます。保険算定の都合も考えると、1か月あけるのが実際的です。

外科に進むかどうかはポケットの深さで決めます。X線で骨欠損が垂直性で、再生療法が効きそうな形であれば、再生療法を勧めます。動揺度は、外科の適否ではなく固定をするかどうかの判断に使っています。再生療法を行う歯は、固定しておいたほうが再生しやすいと考えています。

私の決め方2:再SRPは基本的に行わない

ガイドラインは4〜5mmの残存ポケットに再インスツルメンテーションを提案していますが、私は基本的に再SRPを行いません。SRPをして、再評価をして、それでもポケットが残っているなら、それは外科の適応です。

理由は単純で、外科のほうが確実だからです。上の表のとおり、再SRPは4〜5mmでも3分の1が残り、6mm以上では3分の2が残ります。残れば、またSRPか、結局は外科です。その間、患者さんは通院を重ね、ポケットは残ったままです。残存ポケットが5mmで歯の喪失オッズ7.7倍、6mmで11倍というMatulieneら(2008)のデータを踏まえると、閉じる見込みの低い処置を繰り返す時間のほうがリスクだと考えています。

4〜6mmではアタッチメントゲインで非外科がわずかに有利、というデータは承知しています。それでも、直視下で根面を確実に処理し、ポケットを確実に浅くすることを優先しています。

例外は、全身状態で外科ができない場合です。そのときはSRPに留めます。

私の決め方3:外科に進まないのはどんなときか

6mm以上のポケットが残っていても外科に進まないのは、HbA1cが高い場合と、治療への理解が得られない患者さんの場合です。

プラークコントロールは、外科の前に可能な限り改善します。PCRが良好な患者さんは、実際に治りも良いからです。ガイドラインも、セルフケアが不十分な患者には外科を行わないことを強く推奨しています。

本当に厳しく見るなら、浸潤麻酔の針を刺したときに歯肉から出血するようでは、プラークコントロールはまだできていません。厳しい基準ですが、「ちゃんとやる」とはそういうことだと思っています。

ただし、ここに固執しすぎると治療の開始が遅れます。深いポケットを抱えたまま、PCRの数字が下がるのを何か月も待つことにもリスクがあります。改善にはできる限り取り組む、しかし完璧を待って外科の時機を逃さない。この兼ね合いは、毎回悩むところです。

私の決め方4:再生療法の適応なら再生療法、それ以外は切除療法

術式の振り分けは、再生療法の適応があるかどうかで決めています。適応があれば基本は再生療法です。上で見たとおり、歯を長く残すという点で最も裏付けがあるのが再生療法だからです。適応がなければ、妥協的に切除療法を行います。何をもって再生療法の適応とするか、骨欠損の形と予後の関係は、骨欠損形態と予後の記事にまとめました。ステージとグレードの使い方は新分類の臨床活用の記事をご覧ください。

歯周外科をしない先生へ:深いポケットは紹介を

歯周外科を行わない先生に伝えたい紹介の基準は、1つだけです。基本治療のあとに深いポケットが残っている症例は、すべて紹介してください。

深い残存ポケットの経過観察は、悪くなるのを待っているのと同じです。紹介されてくる症例を診ていると、もう少し早い段階で外科に進めていれば残せた、と感じることが少なくありません。

まとめ

  • 基本治療でポケットの約4分の3は閉じる。器具や進め方で結果は変わらない
  • 残存ポケットへの再SRPの閉鎖率は、4〜5mmで約3分の2、6mm以上で約3分の1
  • 外科が非外科を明確に上回るのは6mmを超えるポケット。浅い部位は開けると失う
  • 歯が多く残ると直接示されているのは再生療法(20年で喪失0本対2本、抜歯相当の歯でも10年88%)。フラップ手術と非外科の間では、歯の喪失に差は示されていない
  • 私は再SRPを繰り返さない。SRP→再評価(最低2週間、できれば1か月)→残っていれば外科
  • プラークコントロールは可能な限り改善する。ただし固執して外科の時機を逃さない
  • 外科に進まないのは、HbA1cが高い場合と、治療への理解が得られない場合
  • 再生療法の適応なら再生療法、それ以外は切除療法
  • 外科をしない先生は、深いポケットが残った時点で紹介を

参考文献:Suvan J et al. J Clin Periodontol 2020;47(S22):155-175(PMID 31889320)/Ferrarotti F et al. Clin Oral Investig 2023;27:6701-6708(PMID 37773418)/Heitz-Mayfield LJA et al. J Clin Periodontol 2002;29(S3):92-102(PMID 12787211)/Lindhe J et al. J Clin Periodontol 1982;9:323-336/Sanz-Sánchez I et al. J Clin Periodontol 2020;47(S22):282-302(PMID 31970821)/Sanz M et al. EFP S3 guideline. J Clin Periodontol 2020;47(S22):4-60(PMID 32383274)/Matuliene G et al. J Clin Periodontol 2008;35:685-695(PMID 18549447)/Cao GF et al. Int Dent J 2026;76(4):109555/Cortellini P et al. J Clin Periodontol 2017;44:58-66/Cortellini P et al. J Clin Periodontol 2020(PMID 32249446)


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この記事を書いた人

歯周病専門医(日本歯周病学会認定・2014年)。明海大学歯学部卒業後、同大学歯周病学分野で臨床・教育に携わり、2019年に米国NSU歯周病学レジデントプログラムで研修。現在は福嶋歯科医院(東京都多摩市)院長・医療法人社団Fortune Arch理事長として、歯周外科とインプラント治療を専門に、これまでに1,000例を超える外科症例を手がける。歯科医師には「手を動かして身につける」臨床技術を、患者さんには歯周病を防ぐセルフケアを発信している。

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