歯周病の新分類を外来でどう使うか ― ステージで「誰が診るか」を決め、12段階で患者に伝える

歯周炎のステージとグレードを組み合わせた12段階の重症度マトリクス

2017年の新分類(ステージ/グレード)は、学会の認定医申請では必須になりましたが、日常の外来で「何の役に立つのか」が腑に落ちていない先生は多いと思います。保険病名には影響しないし、点数も変わらない。それでも私は初診の全員にステージとグレードを付けています。理由は、それが「誰が診るか」「どう説明するか」「どの間隔で呼ぶか」を決める道具になっているからです。

目次

文献が言えること:ステージとグレードは歯の喪失を予測する

新分類は重症度の記述法として作られましたが、予後の予測にも使えることが後から示されました。ミシガン大学の後ろ向き研究(Ravidà 2020、292名、平均約24年追跡)では、ステージIVはステージIに比べて歯周炎による歯の喪失リスクが3.7倍、グレードCはグレードAの4.8倍でした。同じグループの442名11,125歯の解析(Ravidà 2021)でも、ステージとグレードが喪失の最も強い予測因子でした。

メインテナンスとの関係も調べられています。同じコホートで、歯の喪失リスクが対照群と同等に抑えられる最長の来院間隔は、ステージI〜IIで7.4か月、III〜IVで6.7か月、グレードCで6.7か月でした(Ravidà 2021)。ステージIII以上の患者が5年のうち1年以上メインテナンスを欠くと、喪失のオッズは2.55倍です。

一方で、残存ポケットの重みも古くから示されています。Matulieneら(2008、平均11.3年)では、術後に残ったポケットが5mmで歯の喪失オッズ7.7倍、6mmで11倍、7mm以上で64倍でした。EFPの2020年ガイドラインが外科の適応を「基本治療後の残存ポケット6mm以上」に置いているのは、この系譜です。

文献が言えないこと

「ステージが高いほど初期治療を強化すべきか」「グレードCなら早く手術すべきか」を直接比べた試験はありません。ガイドラインの段階的アプローチ(Step 1〜4)はステージI〜III共通で、外科に進むかどうかは再評価時の残存ポケットで決まります。メインテナンス間隔も「3〜12か月、リスクに応じて」という専門家合意で、上の6.7か月という数字は後ろ向き解析の統計的な閾値であって推奨値ではありません。

つまり文献が示しているのは「ステージとグレードは予後を反映する」ことまでで、「だから外来でこう使え」は各医院が決めることになります。以下は私の決め方です。

私の使い方1:ステージで「誰が診るか」を決める

初診でステージとグレードを付けたら、まずそれで院内の担当を分けます。ステージII以下は歯科衛生士と一般の勤務医が担当し、ステージIII以上は歯周病専門医である私が担当します。

線をIIIに引く理由は、ステージIIIの定義そのものにあります。ポケット6mm以上、垂直性骨欠損3mm以上、根分岐部病変II度以上といった「管理の複雑さ」の因子が入ってくるのがIIIからで、これは歯周外科が視野に入るということです。さらにステージIIIは歯周炎による喪失歯が出てくる段階なので、補綴的な治療計画も同時に必要になります。外科と補綴の両方を見通せる人間が最初から診たほうが、治療計画が一貫します。

逆にステージII以下を専門医が抱え込む必要はありません。基本治療とメインテナンスで管理できる患者を衛生士と勤務医に任せることで、専門医の時間を外科と補綴に集中させられます。新分類は、院内の役割分担を決める道具として一番機能しています。

私の使い方2:12段階に換算して患者に伝える

患者さんに「ステージIII、グレードB」と言っても伝わりません。私は、ステージ(4段階)とグレード(3段階)を掛け合わせて12段階の尺度にし、「12段階中の何番目か」で伝えています。ステージIII・グレードCなら9番目、ステージII・グレードBなら5番目、という具合です。

グレードAグレードBグレードC
ステージI123
ステージII456
ステージIII789
ステージIV101112

12段階中9番目、と聞けば、患者さんは自分の重症度を直感的に位置づけられます。厳密な等間隔の尺度ではありませんし、学術的な裏付けがある換算でもありません。ただ、初診のコンサルで「今どこにいるか」を共有する目的には、これで十分に機能しています。

グレードは「年齢の割に速いか」を伝えるために使う

グレードは、進行速度が年齢の割に速いかどうかの判断に使っています。骨吸収の割合を年齢で割って1.0を超えるならグレードCで、「あなたの年齢にしては進み方が速い」と伝えます。同じステージIIIでも、グレードAとCでは患者さんに伝えるべき緊急度が違います。

グレードCの修飾因子である喫煙については、禁煙指導は常に行っています。正直に言えば、禁煙させるのは難しい。それでも「タバコがグレードを1つ上げている」と数字で示せるのは、新分類の実用的な利点です。血糖については、HbA1cを測定する機器を導入しましたが、治療への介入はまだ行っていません。今後の課題です。

私の使い方3:メインテナンス間隔をステージと残存ポケットで決める

メインテナンスの間隔は、ステージと、治療後の残存ポケットの2つで決めています。

  • ステージIII以上:1か月に1回
  • ステージII以下:3か月に1回
  • ステージI、または歯肉炎程度:6か月に1回
  • 残存ポケットが4mm:3か月に1回。5mmを超えて残っていれば、ステージにかかわらず毎月

文献の6.7か月やガイドラインの3〜12か月に比べると、ステージIII以上を毎月というのはかなり厳しい設定です。理由は2つあります。1つは、ステージIIIの患者は外科や補綴を含む治療が長期にわたるので、月1回の来院がそのまま治療の進行管理を兼ねること。もう1つは、残存ポケットが5mmを超えた歯の喪失リスク(Matulieneでオッズ7.7〜11倍)を、来院頻度で埋め合わせるしかないと考えているからです。

カルテと保険病名

カルテには新分類のみを記載しています。旧分類との併記はしていません。保険病名は歯周病であれば点数算定に影響しないので、分類は請求のためではなく、治療計画を立てるためと、患者さんに重症度を伝えるために使う、と割り切っています。

まとめ

  • ステージとグレードは歯の喪失を予測する(ステージIV vs I で3.7倍、グレードC vs A で4.8倍)
  • ただし「ステージ別に治療を変えろ」という試験はない。使い方は各医院が決める
  • 私はステージIIIを境に院内の担当を分け、専門医は外科と補綴が必要な患者に集中する
  • 患者説明はステージ×グレードの12段階換算で「今何番目か」を共有する
  • メインテナンスはステージIII以上で毎月、残存ポケット5mm超も毎月
  • カルテは新分類のみ。分類は請求のためではなく、計画と説明のために使う

参考文献:Tonetti MS, Greenwell H, Kornman KS. J Periodontol 2018;89(S1):S159-S172(PMID 29926952)/Kornman KS, Papapanou PN. J Periodontol 2020;91:352-360(PMID 31891194)/Ravidà A et al. J Periodontol 2020;91:454-461(PMID 31502244)/Ravidà A et al. J Clin Periodontol 2021;48:648-658(PMID 33484162)/Ravidà A et al. J Clin Periodontol 2021;48:1008-1018(PMID 33998024)/Matuliene G et al. J Clin Periodontol 2008;35:685-695(PMID 18549447)/Sanz M et al. EFP S3 guideline. J Clin Periodontol 2020;47(S22):4-60(PMID 32383274)/日本歯周病学会「歯周病の新分類への対応」2019

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この記事を書いた人

歯周病専門医(日本歯周病学会認定・2014年)。明海大学歯学部卒業後、同大学歯周病学分野で臨床・教育に携わり、2019年に米国NSU歯周病学レジデントプログラムで研修。現在は福嶋歯科医院(東京都多摩市)院長・医療法人社団Fortune Arch理事長として、歯周外科とインプラント治療を専門に、これまでに1,000例を超える外科症例を手がける。歯科医師には「手を動かして身につける」臨床技術を、患者さんには歯周病を防ぐセルフケアを発信している。

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