骨欠損の形で再生療法の予後は決まるのか ― 文献の結論と、私が「形態で患者を選ばない」理由

1壁性・2壁性・3壁性の骨縁下欠損を比較した模式図

再生療法の成績は骨欠損の形で決まる、と教科書には書いてあります。深く、狭く、壁の多い欠損ほど良く治る。これは文献的にも正しい。ただ、私は「一番効果があるパターンだけを選んでオペをする」というやり方はしていません。この記事では、形態と予後について文献が言えることを整理したうえで、それを外来でどう使い、どう使わないかを書きます。

目次

文献が言えること:深く・狭く・壁が多いほど治る

形態別の治癒をまとめた系統的レビュー(Nibali 2021)の結論は明快で、初期欠損が深いほどX線的な骨獲得が大きく、欠損角が狭いほど、壁数が多いほど、骨獲得とアタッチメント獲得の両方が大きい、というものです。

古典的にはTonettiら(1993)が、骨縁下成分の深さとX線的欠損角が組織獲得量を有意に規定することを示しました。角度についてはTsitouraら(2004)がEMD症例で、欠損角22°以下は36°以上に比べて3mm超のアタッチメント獲得を得る確率が2.46倍と報告しています。壁数については、3壁性は1壁性に比べて3mm以上のアタッチメント獲得を得る確率が約2.7倍高いとする報告があります(Koop 2012が引用)。

なお、よく引用される「25°以下が狭い、37°以上が広い」という閾値は学会抄録が出典で、論文としては存在しません。記事で数字を使うなら22°/36°のほうです。

文献が揺れているところ:1壁は本当に不利か

2025年に興味深いデータが出ました。Simonelliら(101欠損、SFA±EMD±異種骨)は、12か月でのポケット閉鎖率74.3%を報告し、形態別に見ると「主に2壁」の欠損を基準にして、「主に1壁」(オッズ比7.1)と「主に3壁」(5.2)のほうが閉鎖しやすかった、というのです。1壁が最も閉鎖しやすいという、通説と逆の結果です。

この結果を私の実感と照らすと、1壁性が閉鎖しやすいとは思えません。1壁性はやはり閉鎖しにくい。2壁性が難しいという点は同意しますが、1壁性が有利という部分は、この研究の「主に1壁」の定義や術式(SFA)の影響を見る必要があると思っています。文献が1本出たからといって、臨床の感覚をすぐに書き換えるものではない、というのが正直なところです。

私の臨床:形態で選ばない、今より良くするためにやる

術前にX線で見るのは、垂直性か水平性か、その程度です。あとは開けてやるだけ。角度を測って22°以下だから適応、36°以上だから不適応、という選び方はしていません。

理由は、私の目的が「文献上の最良の数字を出すこと」ではなく「この歯を今より良くすること」だからです。効果が出やすいパターンだけを選んで手術すれば、論文の成績は良くなります。しかしその選び方は、対象から外れた患者さんの歯を悪化するまで見ているだけになる。経過観察は、悪化していく過程を観察しているだけだと私は考えています。

1壁性の欠損にどう向き合うか

1壁性で再生療法の成功率が下がることは、患者さんに説明します。そのうえで希望があれば再生療法をやります。同時に、抜歯してインプラントにする選択肢も必ず提示します。切除療法という選択肢もありますが、切除した結果として動揺が増えるようであれば、抜歯を勧めます。

最終的にどちらを勧めるかは、患者さんのキャラクターを見て決めている部分があります。メインテナンスに通い続けられる人か、一度で決着をつけたい人か。前回の記事で書いたとおり、SPTに来なくなった歯は悪化します。1壁性のような条件の厳しい歯ほど、術後の通院が結果を左右するので、そこまで含めて選択肢を出します。

形態の知識をどう使うか

形態の知識は「やるかやらないか」を決めるためではなく、「どうやるか」と「どう説明するか」のために使っています。

  • 狭く深い3壁性:材料の足場が確保しやすい。小さなフラップ(MIST/M-MIST)で創を安定させる
  • 広い2壁性のクレーター:スペース維持のために骨補填材を入れる
  • 1壁性:補填材と膜でスペースを作る。成功率が下がることを説明し、インプラントも提示する
  • 深い欠損:獲得量は大きいが、ポケットが残る確率も上がることを説明しておく(Simonelli 2025ではベースラインのポケットが1mm深いごとに閉鎖のオッズが0.74倍)

EFPの2020年ガイドラインが再生外科の適応として示しているのは「3mm以上の骨縁下欠損に深い残存ポケットを伴う歯」だけで、角度や壁数による除外基準は置いていません。形態は予後を予測する道具であって、患者さんを門前払いする道具ではない。ガイドラインもそういう作りになっています。

まとめ

  • 文献:深く・狭く・壁数が多いほど治る。角度は22°/36°、1壁は不利、が根拠のある範囲
  • ただし2025年の研究では1壁が閉鎖しやすいという逆の結果も。文献1本で臨床感覚は書き換えない
  • 私は形態で患者を選ばない。X線で垂直性を確認したら、今より良くするためにやる
  • 1壁性は成功率を説明したうえで、再生療法とインプラントの両方を提示する
  • 形態の知識は「やるか」ではなく「どうやるか・どう説明するか」に使う

参考文献:Nibali L et al. J Clin Periodontol 2021;48:100-113(PMID 33025619)/Tonetti MS et al. J Periodontol 1993;64:934-940(PMID 8277400)/Tsitoura E et al. J Clin Periodontol 2004;31:643-647(PMID 15257742)/Koop R et al. J Periodontol 2012;83:707-720/Simonelli A et al. Clin Oral Investig 2025;29:316(PMID 40434441)/Cortellini P, Tonetti MS. Periodontol 2000 2015;68:282-307/Sanz M et al. EFP S3 guideline. J Clin Periodontol 2020;47(S22):4-60

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この記事を書いた人

歯周病専門医(日本歯周病学会認定・2014年)。明海大学歯学部卒業後、同大学歯周病学分野で臨床・教育に携わり、2019年に米国NSU歯周病学レジデントプログラムで研修。現在は福嶋歯科医院(東京都多摩市)院長・医療法人社団Fortune Arch理事長として、歯周外科とインプラント治療を専門に、これまでに1,000例を超える外科症例を手がける。歯科医師には「手を動かして身につける」臨床技術を、患者さんには歯周病を防ぐセルフケアを発信している。

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