フラップを開けて骨欠損が見えたあと、肉芽をどこまで、何で取るか。教科書には「肉芽組織を徹底的に除去する」と書いてありますが、実際に手を動かすと、キュレットが届かない場所、時間がかかりすぎる場所が必ず出てきます。
この記事では、私が現在の臨床で実際にやっている肉芽除去の器具の組み合わせと、その使い分けを書きます。特別な器具は使いません。多くの歯科医院にすでにあるもので組み立てています。
結論:主役は手用キュレット、回転切削器具は補助
先に結論を書くと、肉芽除去のメインは手用キュレットです。大まかな肉芽はキュレットで取り、キュレットが届かない細かい部位や狭い部位だけを、回転切削器具(バー)で補助的に処理します。
回転切削器具を主役にしない理由は、あとで書くとおり、セメント質や骨を削りすぎるリスクがあるからです。時間短縮の魅力はありますが、削るべきでないものまで削ってしまっては本末転倒です。
まず揃えるのはグレーシーキュレット4本
手元に手用キュレットが1本しかない、という状態では歯周外科は始められません。ただし何十本も要りません。次の4種類があれば、ほとんどの部位に届きます。
- #1/2(前歯部)
- #5/6(前歯部〜小臼歯の近遠心)
- #11/12(臼歯部 近心面)
- #13/14(臼歯部 遠心面)
近心用、遠心用、頬側・舌側用と考えて、この4本を揃えることが最初の一歩です。マニュアルでも縫合の前にこの器具の準備を置いているのは、ここが整っていないと術野で手が止まるからです。
キュレットが届かない場所をどうするか
問題はここからです。深い垂直性骨欠損の底、根面が湾曲している部位、幅の狭い欠損。キュレットの刃部が入らない、あるいは入っても動かせない場所が残ります。
ここで使うのが回転切削器具です。私が現在メインで使っているのはルートプレーニング用のバーです。
ルートプレーニング用バーでも届かない、さらに細い・深い部位には、コア形成用のテーパーリーマーを使うことがあります。テーパーリーマーは長さがあるので、バーが届かない深さまで到達できます。ただし歯根を傷つける可能性が高くなるので、この場合はあくまで最後の手段です。
どの製品を、どのサイズで、どの順番で使うかは、歯周外科マニュアルの器具の章にまとめています。
回転数と圧:速く、軽く、真横から
回転切削器具はコントラアングルに装着して使います。肉芽を取るときのコツは3つです。
- 回転数は高めに。回転が遅いと歯根面がガタガタになりやすい。高めの回転数で回して、
- 圧は弱く。押し当てず、軽く触れる程度で肉芽だけを絡め取る。
- 真横から当てる。根面に対して側方から接触させ、先端を押し込まない。
注水しながら削れるので、術野が見やすいのは利点です。一方で、骨を傷つけて出血すると一気に見えなくなります。「見やすいが、見えなくなるリスクも上がる」道具だと理解して使ってください。
向いている状況、向いていない状況
回転切削器具が向いているのは、主に垂直性骨欠損です。狭くて深い欠損の底に残る肉芽を、短時間で処理できます。
ただし第一選択ではありません。まず手用キュレットで取れるだけ取る。それでも残る部分にだけ使う。この順番を逆にすると、次に書く失敗が起きます。
やってはいけないこと
回転切削器具の最大の問題は、セメント質を削りすぎることです。肉芽を取っているつもりで根面を削り続けると、セメント質が失われ、再生療法の足場そのものを壊してしまいます。使用は短時間に抑えてください。
骨も同様です。骨面に当てれば削れます。使用は最小限に。
失敗のサインは「削っているのに肉芽が減らない」感覚です。それはもう肉芽ではなく硬組織を削っています。すぐに止めて、手用器具に戻してください。
従来のやり方から何が変わったか
キュレットだけで肉芽を取っていた頃と比べて、肉芽除去にかかる時間は明らかに短くなりました。手も疲れにくくなります。1回の手術で扱える範囲が広がるので、術者にとっても患者にとっても負担が減ります。
ただし繰り返しますが、時間が短縮されるのは「手用器具で大まかに取ったあとの仕上げ」に限った話です。最初から回転切削器具で取りにいくと、時間は短くなっても仕上がりが悪くなります。
明日から試すなら
まず、手元のグレーシーキュレットを確認して、#1/2、#5/6、#11/12、#13/14の4種類を揃えてください。これだけでキュレットが「届かない」場面はかなり減ります。
そのうえで回転切削器具は、新しく買う前に、いま医院にあるものから始めてください。コア形成用のテーパーリーマーのほか、CR研磨用のバーのうちシャンクが長いコントラ用のものは、細い部位の肉芽除去に使えます。
道具を揃えたら、次は実際に手を動かす番です。豚顎を使えば、切開・剥離・肉芽除去・縫合を、患者さんを待たせることなく何度でも練習できます。
歯周外科マニュアル(PDF)
豚顎実習をベースに、器具の揃え方から縫合、基本術式、歯周形成外科までを解説。この記事で触れた器具の具体的な製品・サイズ・入手先も、器具の章と追補にまとめています。
