歯周外科がうまくいっても、5年後、10年後にその歯が残っているかどうかは別の問題です。長期の結果を決めるのは、術式よりもその後のメインテナンス(SPT)だと言われます。では、SPTに来なくなった患者さんの歯は実際どうなるのか。どれくらいの患者さんが通い続けるのか。文献を整理します。
メインテナンスなしの外科は再発する
古典的な研究があります。進行した歯周炎の患者90名に、多くはウィドマン改良フラップ手術を行い、その後3分の2を2〜3か月ごとのリコールに乗せ、3分の1を一般歯科に戻して6年追跡しました(Axelsson & Lindhe 1981)。リコール群は口腔衛生を維持してアタッチメントレベルも変わらなかったのに対し、非リコール群ではポケットの再発、出血、アタッチメントロスが明らかでした。
骨外科を含む治療を受けたあと、3回のリコールの呼びかけに応じなかった44名を平均5.25年後に調べた研究(Becker 1984)でも、平均ポケットは改善しておらず、骨レベルは有意に悪化し、分岐部病変は22%で悪化していました。
外科は、メインテナンスとセットで初めて成立する治療です。
通う患者と通わない患者で、歯の喪失はどれだけ違うか
5年以上追跡した8研究のメタ解析(Lee 2015)では、規則的にSPTに通った患者の歯の喪失リスクは、不規則な患者の0.56倍でした。ほぼ半分です。
差をつくっているのは「平均して年に何回来たか」ではなく、「長い空白があったかどうか」です。101名を平均9.7年追った研究(Petit 2019)では、患者1人あたりの年間の歯の喪失は次のとおりでした。
| 通院の状況 | 年間の歯の喪失(本/人) |
|---|---|
| 継続して通院 | 0.18 |
| 2年間の中断あり | 0.35 |
| 5年を超える中断あり | 0.40 |
著者らは、歯の喪失は長い連続した中断のある患者で起きており、平均の来院頻度の影響は小さかった、と述べています。新分類の臨床活用の記事で紹介した、ステージIII以上の患者が5年のうち1年以上SPTを欠くと歯の喪失オッズが2.55倍になるというデータ(Ravidà 2021)と同じ方向の結果です。
ステージIII〜IVの患者で外科と非外科を比べた最近の研究(Cao 2026)でも、外科のポケット減少の優位は3年を超えると縮まり、結果の改善と一貫して関連していたのは、外科か再SRPかではなく、定期的にメインテナンスを受けているかどうかでした。
正直なところ、差はそれほど大きくない研究もある
公平のために書くと、メインテナンスの効果が小さい、または有意でない研究もあります。リスク評価別に遵守者と非遵守者を比べた研究(Trombelli 2021)では、年間の歯の喪失は遵守者0.14本、非遵守者0.21本で、全体では有意差がありませんでした。差が開いたのは最もリスクの高い群で、0.32本対0.52本です。
メインテナンス中の歯の喪失を調べた13研究のレビュー(Chambrone 2010)では、41,404歯のうち3,919歯が失われ、歯周病が理由の喪失は1.5〜9.8%、1本も失わなかった患者は36〜88.5%でした。関連していたのは年齢、喫煙、治療開始時の歯の予後です。
つまり、SPTの効果は全員に均等ではありません。効くのは、リスクの高い患者と、長く中断させなかった場合です。
何割の患者が通い続けるか
個人開業の歯周病専門医院で961名を8年追った有名な研究(Wilson 1984)では、完全に通い続けた患者は16%でした。49%は不規則、34%は一度も来ていません。重症の患者ほど遵守が悪いという結果も出ています。同じ医院が改善策を導入したあとの続報では、完全遵守は32%まで上がりました。
39論文のシステマティックレビュー(Amerio 2020)では、完全遵守の割合は3.3〜86.8%と、施設によって桁違いに違います。患者が挙げた中断の理由で最も多かったのは「情報と動機づけの不足」でした。一方、ステージIII〜IVの233名を平均21.7年追ったドイツの研究(Eger 2026)では、完全遵守は70%、年間の歯の喪失はステージIIIで0.11本、ステージIVで0.22本です。
通い続けるかどうかは患者の性格だけで決まるのではなく、医院の仕組みで大きく変わる、と読めます。
SPTで何を診るか:BOPと残存ポケット
BOPは、陽性のときより陰性のときに意味があります。動的治療後の患者を2年半追った研究(Lang 1990)では、BOP陽性が続いた部位が実際に進行する確率(陽性的中率)は6%にすぎませんでした。一方、BOP陰性が続いた部位が安定している確率(陰性的中率)は98%です。「出血しない部位は安定している」とは言えますが、「出血したから悪くなる」とは言えません。
進行の予測に効くのは残存ポケットの深さです。残存5mmで歯の喪失オッズ7.7倍、6mmで11倍、7mm以上で64倍(Matuliene 2008)という数字は、これまでの記事でも繰り返し出てきました。
EFPガイドラインは、SPTの間隔を3か月から最長12か月の範囲で、患者のリスクに応じて決めることを推奨しています(Grade A)。SPTに移る前の目標は、6mm以上のポケットがないこと、出血を伴う5mm以上のポケットがないことです。
文献が言えないこと
メインテナンスの有無を無作為に割り付けた長期試験は、実質的にAxelsson & Lindheの系譜しかありません。「通う患者は歯を失いにくい」というデータのほとんどは観察研究で、通う患者はもともと喫煙が少なく健康行動が良い、という偏りを除けません。「規則的」の定義も研究ごとに違います。リスクに応じて間隔を変えると歯の喪失が減る、と示した介入試験も見つかりませんでした。SPT中に再発した部位を再SRPにするか外科にするかを比べた質の高い研究もありません。ここから先は医院ごとに決めることになります。以下は私の決め方です。
私の決め方1:間隔はステージと残存ポケットで決める
当院のSPTの間隔は次のとおりです。
- ステージIII以上:1か月に1回
- ステージII以下:3か月に1回
- ステージI、または歯肉炎程度:6か月に1回
- 残存ポケットが4mm:3か月に1回。5mmを超えて残っていれば、ステージにかかわらず毎月
ガイドラインの3〜12か月に比べると、ステージIII以上を毎月というのは厳しい設定です。ただ、上の文献を踏まえると、この設定にはもう1つ意味があります。歯を失わせるのは「長い空白」です。毎月の予約が入っている患者さんは、1回キャンセルしても空白は2か月で済みます。6か月ごとの患者さんが1回飛ばせば、空白は1年になります。リスクの高い患者さんほど間隔を詰めておくことは、中断に対する保険にもなります。
私の決め方2:残った5mm以上はSPTで追い、悪化したら再介入する
治療後に5mm以上のポケットが残った部位は、SPTで毎月追います。悪化の兆候があれば再介入します。再介入の方法は、SRPで残ったポケットをどうするかの記事に書いたとおりです。再SRPを繰り返すのではなく、外科を検討します。
BOPが1回出ただけの部位を、すぐ再治療の対象にはしません。見るのはポケットの深さの変化と、出血が続いているかどうかです。
まとめ
- メインテナンスなしの外科は再発する(Axelsson & Lindhe 1981、Becker 1984)
- 規則的に通う患者の歯の喪失リスクは、不規則な患者の0.56倍
- 歯を失わせるのは来院回数の少なさではなく、2年、5年といった長い空白
- 効果は均等ではない。差が開くのはリスクの高い患者
- 完全に通い続ける患者は16%から70%まで、医院によって大きく違う。中断理由の1位は「情報と動機づけの不足」
- BOPは陰性のときに意味がある(陰性的中率98%、陽性的中率6%)。進行を予測するのは残存ポケットの深さ
- 間隔はステージと残存ポケットで決める。リスクの高い患者ほど詰めておくことが、中断への保険になる
参考文献:Axelsson P, Lindhe J. J Clin Periodontol 1981;8:281-294(PMID 6947992)/Becker W et al. J Periodontol 1984;55:505-509/Lee CT et al. J Dent Res 2015;94:777-786(PMID 25818586)/Petit C et al. Clin Oral Investig 2019;23:4123-4131/Ravidà A et al. J Clin Periodontol 2021;48:1008-1018(PMID 33998024)/Cao GF et al. Int Dent J 2026;76(4):109555/Trombelli L et al. Clin Oral Investig 2021/Chambrone L et al. J Clin Periodontol 2010;37:675-684/Wilson TG et al. J Periodontol 1984;55:468-473(PMID 6384465)/Amerio E et al. J Clin Periodontol 2020;47:81-100/Eger T et al. J Clin Periodontol 2026;53:2-11/Lang NP et al. J Clin Periodontol 1990;17:714-721(PMID 2262585)/Matuliene G et al. J Clin Periodontol 2008;35:685-695(PMID 18549447)/Sanz M et al. EFP S3 guideline. J Clin Periodontol 2020;47(S22):4-60(PMID 32383274)
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